■和紙の歴史文献上では、推古天皇十八年(610)に紙墨の製法が伝わったとありますが、それ以前に伝来していた可能性は高いと思われます。現存する最古の紙は、正倉院に残る大宝二年(702)の戸籍用の楮紙です。平安時代になると、大陸伝来の"溜め漉き"という方法に代わって、ネリ(トロロアオイの根から取れる汁液)を使う"流し漉き"という画期的な方法が編み出されました。現在もほとんどの和紙はこの方法で漉かれています。国風文化が花開いたこの時代は、かなの発達とともに華麗な料紙も多く作られました。主原料は手間のかかる麻から、楮、雁皮へと移行し、その後三椏が加わります。鎌倉以降、料紙は質が落ち、種類も少なくなりますが、各地方で用途に合わせた特色のある紙が作られるようになります。江戸時代には幕府の保護もあり、書写材料にとどまらず生活の隅々にまで和紙が使われました。
現存する日本最古の紙 大宝二年(702)び戸籍用の「楮紙」
資料提供:芸術新聞社「墨スペシャル26 文房四宝の楽しみ」より
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