■固形墨の起源甲骨片に筆で下書きされたと思われる朱や黒の跡が残っていることから、墨の存在が推測されるのですが、それがどういう状態のものであったかはわかりません。秦(前212〜前202)の墓から石硯・磨石とともに出た墨が、確認される最古のものです。硯と石の問に墨片を挟み、潰したり、練ったりして使われていたようで、初めは天然の石墨(黒鉛)を用い、次第に煙煤を小さく丸く固めたようなもの(墨丸)になっていったと考えられます。需要の高まりに従って硯・墨の改良が進み、後漢(25〜220)の墓の壁画に円形の硯に円錐形の墨が乗っている様が描かれていることからも、このころまでには硯板で磨るための固形墨がすでに姿を現していたようです。
秦の墓から出土した最古の石硯・磨石
資料提供:芸術新聞社「墨スペシャル26 文房四宝の楽しみ」より
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