油煙墨と松煙墨の違い
油煙墨と松煙墨に使用される原料の「煤すす」は共に植物性の炭素でありますが、その「すす」の生い立ちは異なります。油煙の方は油(主に菜種油)を、松煙の方は松の木片を燃焼させて採取しますので墨の質もおのずから異なります。従来、和墨では油煙墨が最高で松煙墨はその次であるということがいつの頃からか定説となっていました。これはおそらく、昔は油煙の方が原料価格が高く、松煙の方が安かったので、高い油煙で造った墨の方が良いとされたものと思います。実際書作上から見て墨色を考えますと、むしろ松煙墨の方が重厚さがあり、年代が古くなるにつれて墨色も変化し、濃淡潤渇による墨色の変化もあって、かえって油煙墨よりおもしろいのではないかと思います。
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