Q.使用後の筆は洗った方が良いのですか。
A.固形墨であれ、液体墨であれ、筆は洗わなければいけません。固形墨の原料は膠です。洗わないということは、筆で宿墨造りをしていることですし、空気中から細菌を拾い培養していることです。膠の乾燥皮膜は固くて割れ易いものですから、筆の毛に墨が固着しますと、毛が折れ易くなります。特に夏場は筆についた細菌が磨墨液の中に混入し爆発的に繁殖する危険があります。膠を原料とした液体墨では塩分を多量に使用していますので常に湿気の多い状態になり、毛の脱脂、軸の膨張、抜け毛の多発の原因になります。合成糊剤を原料とした液体墨は、その乾燥皮膜が柔軟なため一度乾くと膠に比べ水に溶けにくく、無理をすると穂首を折ることがあります。筆の後ろに紐がついているのは使用後はきれいに洗って、よく乾燥して下さいと言うことです。筆を洗い過ぎると油が抜けて書きにくくなるとか、腰が砕けるとか、時には環境汚染になると言って子供に筆を洗わせない学校もあるように聞いております。墨屋は毎日試験のため何十本もの筆を使います。それも淡墨から濃墨まで試験しますので筆は完全に墨気が無くなるまで洗わなければなりません。洗わないより洗った方が何倍も筆の寿命が延び、手になじんだ筆は毛先を使い切っても捨てられないほど愛着がでて参ります。
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